紫外線(UV)への敏感な反応性、正の走光性は夜行性の昆虫で著しく、イネの害虫ニカメイガ(二化瞑蛾)でも顕著です。戦前(1927年)から戦中にかけて東大農学部動物学教室では農林省からの委託研究により、ニカメイガが近紫外放射の330~400nmの波長域に最もよく誘引されることを明らかにし、東芝マツダ支社の手により、この波長域の光放射を効率良く放射する青色蛍光ランプが開発されました。戦時中であったために、この青色蛍光ランプは戦後になり昭和22年ごろから5haあたり1灯の割合で全国的に使われ始め、昭和23年(1948年)には34万haの水田に普及したとみられています。しかし、昭和26年にニカメイガの特効薬浸透性有機リン剤パラチオンが登場し、昭和28年から全国的な使用がはじまるとともに、青色蛍光ランプは急速に姿を消すことになりました。このように電灯による害虫の防除がこれほど大規模に実施された例は世界にその類をみません。 青色蛍光ランプに代わり、ブラックライト蛍光ランプを光源とした補虫器や電撃殺虫器が野球・テニス・ゴルフなど夜間の野外スポーツ施設などに設置され、プレイの妨害昆虫の駆除に使用されたり、庭園の池の上に設けて飛来落下した昆虫を鯉などの観賞魚の餌に供する目的に使用されたりしています。しかし、夜間野外スポーツ施設などで、不必要に昆虫を大量に殺戮している例もあちこちでみられます。近年世界の160以上の国々が賛同する地球の生物の多様性を尊重するのであれば、これらの設置や使用に際しては十分な配慮が必要になるでしょう。なお、電撃殺虫器の誘引光源に用いる紫外線(UV)ランプを通常の交流のものと、直流のものとで、イエバエの誘引数を比較したところ、ハエは圧倒的に交流ランプのほうに誘引されたといいます。交流では電源周波数の2倍のサイクルで常にUVが定期的にフリッカーしますが、蚊、ハエ、トンボなど特に飛行速度の速い昆虫では、運動する物体を識別する運動視を可能にする時間的分解能は高いです。この分解能のために許容されるちらつきの限界(CFF=Critical fusion frequency)はヒトでせいぜい30~40Hzなのに対し、ハエでは140Hz(ハチ200~300Hz、トンボ170Hz)ときわめて高いことが考えると、ハエは交流による紫外線(UV)のちらつきを定位のための信号の構成一因子として受け取っていると考えられます。
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