オゾン層の破壊による地表の紫外線(UV)量の増加から癌の誘発、そのほか生物への影響が論議されていますが、昆虫ではどうでしょうか。植物へのUV-B照射は、それを食べる昆虫の摂取量を減らし、成長速度を低下させ、生存率を下げることなどが、数種の昆虫で知られていて、その原因には植物中の光毒性のフラノクマリン類の増加や糖類の減少などがあげられています。ミカン科やセリ科に分布するフラノクマリン類は昆虫に対して摂食を阻害したり、毒性を示し、その一つキサントトキシンはヨトウムシ(夜盗虫)の一種Spodoptera eridania に対して強い摂食阻害作用を示しますし、またソラレンとベルガプテンを蛾の1種タマナギンウワバの幼虫に同時に与えた実験では強い毒性を発揮し、幼虫を成育途次で死亡させています。しかし、ベルガプテン単独では促成は低いのです。フラノクマリン類は前駆物質のウムベリフェロンから生合成され、特にUVの照射下でその量が増加し、UVの照射下で毒性を発揮します。また、アブラナ科の葉を専門に食べるモンシロチョウ幼虫に48時間UV照射した葉を食べさせたところ、その摂食量は対照区に比べ約40%以上も少なかったのです。また体重も齢の進んだ幼虫では対象区よりも約40%も軽かったのですが、若齢幼虫では差がありませんでした。モンシロチョウ幼虫の摂食量の減少理由として、UV-B照射により、葉中のフラボノイドが増加し、これが摂食阻害因子となっているといいます。しかし、同じアブラナ科を食べるタマナギンウワバでは影響は顕著ではなく、タマナギンウワバがモンシロチョウと異なり、広範囲の植物を食べ、フラボノイドへの耐性が強いのではないかと推論されています。 摘み取ったクワの葉にUVを0.2~0.6mW・cm-2、1~30分間ずつ照射して、カイコに与えると、いずれの場合でもカイコの摂食量は約22%減り、0.4mW・cm-2以上1分間の照射ではカイコの体重が減少します。この摂取量の低下はクワ葉中のショ糖含量の低下によるもので、0.5mW・cm-2を30分間の照射により、糖類は約49%も減少し、特にショ糖含量の低下が大きく、ショ糖含量の低下はカイコの口器にある味覚感覚子の反応を大きく低下させることが電気生理学的に証明されています。この味覚反応の低下がカイコの摂食行動を妨げているとしています。またクワではUV照射により、苦味物質は合成されないといいます。また、UV-Bを照射したカラシナ(芥子菜)にミツバチを放ち、ミツバチの訪花採蜜行動を調べたところ、訪花の総活動時間、訪花数、1花あたりの訪問時間・探索時間・花粉の採取量など、いずれもとくに範かはなかったという観察もあります。
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